10.
June
2016
6月5日にはルマン24公式テストが行われた。
僕にとっては2年振りとなるサルトサーキットでの走行。
今回我々の使用するマシンは旧型のマシンということもあり、ここルマンではかなりの苦戦が予想されたのだが…。
テストの内容はやはり予想以上に厳しいものになった。
今回のテストではルマン24に出場する3人のドライバーの他に、もう1名追加でジェントルマンドライバーが走行することになっていた。
これはチーム側の事情とは言え、貴重な走行時間をレースに出場しないドライバーに奪われてしまうのはやはり厳しい。
走行はルマンでの経験が豊富な僕がまず担当してマシンの状況を確認。
マシンバランスは車の後ろ側が安定しないオーバーステア傾向が強く、幾つかのコーナーでコーナーを攻め切ることが出来ない。
また、ストレートスピードが圧倒的に不足している。
長い長いストレートを何本も持ち合わせているここルマンでは、ストレートのスピード不足がそのまま大きくラップタイムにも影響を及ぼしてしまうのだ。
今回我々の使用するマシンはORECA03というマシンにジャッドエンジンが搭載されている。エンジン、シャーシ共にこのパッケージを使用しているのはたったの2チームだけだ。
マシンに関していえば数年落ちで、他チームの使用する新型マシンに比べると圧倒的な性能差があるのは否めない。エンジンに関しても現在は90%を日産エンジンが占めており、やはりその性能差は明らかだろう。
それでも2年振りに走行するサルトサーキットはやはり特別な感覚だ。
長くレースを続けているが、この感覚は他のどこのサーキットでも味わうことのできない感覚だと思う。
モナコのそれも特別感があったが、ルマンのサーキットはそこはかと何とも味わいがあるのだ。
午前中のテスト走行はチームメートにバトンを渡してからも大きなトラブルはなく、それぞれが順調に周回を重ねることができていた。
ところが残り1時間となった時、今回レースに参加しないドライバーがステアリングを握り数周したところで痛恨のコースオフ…。
マシンに少しのダメージとタイヤを壊してしまい、ここで我々のセッションは終了となった。
ミスは誰だって起こすので仕方のないことではあるのだが、こういった形で貴重な走行時間を失うことはやはり残念なことだ。
午後からの走行は再び僕が最初にステアリングを握ることに。
マシンのセットアップを変更しての走り出しはまずまずのフィーリングではあるのだが、まだ 戦えるレベルには達していない。
新品タイヤでのランも経験したのだが、チームの空気圧のセット間違いによりきちんとした判断をすることが出来ずに終了…。
レースまでにこうしたチームのミスやコミュニケーションの取り方も改善していくのが重要だろう。
僕は常々、人生は厳しいと感じられる環境からでしか、本当の成長は得られないものだと思っている。
綺麗ごとではないのだが、こんな時こそが人が成長する為の一番のチャンスなのかもしれない。
チームメイト達はタイヤの内圧を調整して走行を重ねることが出来たのだが、マシンのバランスはまだ完全とは程遠いところにあるようだ。
最後は赤旗によるセッションの中断でそのまま午後の走行も終了。
僕も最後にもう一度走行予定だっただけに残念ではあるが仕方ない。
今ある条件の中でベストを尽くせるよう、引き続きチームと共に全力で戦います!