WEC世界耐久選手権 SEASON 2014

24時間を超えて2014(2)

24.
June
2014

6月1日に行われたテスト走行ではほんの少しではあるがGTマシンの特徴を掴むことが出来た。
ただチームの事情で走行時間を早々に切り上げたため思う存分走れたとまでは言えない。
それでもこの時点では僕は公式テストのみの参加でレースへ参戦出来るとは露ほどにも思って いなかったため、こうして一年ぶりにルマンのサルトサーキットを走れただけでも満足だった・・・。

24時間を超えて2014

今回僕が共に戦うのは、ドイツの老舗チームであるファーンバッハーレーシングと日本のチーム・タイサンとのコラボチームだ。
思えばドイツのチームでレースを戦うのは初めてだ。
今までイギリス・フランス・ベルギー・アメリカ・スペイン・イタリアなど様々な国々のチームと仕事をしてきたが、それぞれに特徴があり、その違いからは毎回学びがあった。
今回のドイツチームからはどんなことが学べるのだろうか。

24時間を超えて2014

そしてルマン24参戦が決まった余韻に浸る間もなくレースウィークが始まった。
月曜日の公開車検から始まり、火曜日のドライバーズブリーフィングにサイン会など、この1週間ルマンの町はレース一色に染まる。
僕にとってはこうしてレースウィークの走行が始まる水曜日にレーシングスーツを着てサーキットにいられることが未だに不思議な感覚だ。

ただそんな感慨に耽っている余裕などどこにもない。
時間との戦いはサーキット上だけではないのだ。
新しいチームに新しいマシン、そしてジェントルマンドライバーである2人のチームメートをいかにして決勝レースに向けて正しい方向に導けるかの戦いはここから始まる。

24時間を超えて2014

水曜日。

テスト走行初日の走り始めからマシンのセットアップを託されたのはもちろん僕だったのだが、車の状況は思いのほかまとまりがない。
走り始めは特に非常にドライブの難しい状態だった。

先日行われた公式テストではある程度マシンのセットアップも方向性が出ていたのだが、レースウィークに入ってから気温がぐんぐんと上がり始め、テスト時より10℃以上路面温度も上がっている。
僕は経験上これだけの路面温度の変化があればセットアップも大幅に変わりうることを理解しているのだが、どうやら肝心のエンジニアがこの変化についてこれていないようだ。
これは少々困った。

物事を進めていく上でエンジニアとの阿吽の呼吸は重要だ。
今回は思いのほかこの言わばマシンのセットアップにおいてのキーの部分で時間を取られそうな予感がする。
この世界での経験が長いからなのか、もともとあるものなのかは分からないが僕の直感は良く当たる。

初日の走行を終えてみて内容を総括すると、やはり物事を進めていくスピードが僕のイメージするところの倍の時間を要している。
戦いはコース上だけではなく、マシンを降りてからであることは日頃から述べさせて頂いている通りだ。

5で答えを出せることであれば、それを更に4か3で答えを出せるように頭を使わなければならない。
そうすれば次のセッションスタート地点では1か2の時間が省略出来ている。
省略出来た分、一歩進んだ先のレベルから次のセッションがスタートが出来ると言うことだ。
こうして時間というマージンをどんどん増やしていく。
恐らくはレースが始まる頃には5も6も他をリードする事が出来ているだろう。
これが上手に出来るチームがチーム力の非常に強い強豪チームということになる。
そう、スタート前にはほぼ決着がついてしまっているのだ。

勝つためには絶対に必要な方程式であり、僕が長年ヨーロッパやアメリカの強豪チームと共に仕事をして学んできたことでもある。
マシンのセットアップは経験と計算とのコラボレーションでありイマジネーションの世界でもある。
僕はこの分野を得意としているのだが、今回のゲルマン魂バリバリの年輩のエンジニアにはなかなかそれが伝わらないようだ。

24時間を超えて2014

とは言えチームの仕事ぶりは素晴らしくマシンのトラブル等は殆どなく作業のスピードも早い。
チーム全体のムードも決して悪くはない。
この世界で頑固は小さなメリット、大きなデメリットになりかねない。
自分にも言い聞かせないと。(笑)

悪いことに今回のチームメートである2人は走行の度にスピンやコースオフを繰り返し、貴重な走行時間はどんどん奪われていく。
結局僕がこの日走行出来たのはほんの数周のみであった。
それでも感覚を頼りにチームメート達が走り易いマシンを作り上げなければならない。
出来る限り走行時間をチームメートに譲り、僕は僅かな周回でマシンのセットアップに集中する。

24時間を走りきるにはチームメートがマシンに十分な自信を持って走ってくれることが重要だ。
そのためには走りやすいマシンが必須だ。
それをつくり上げるために僕はエンジニアと戦わなければならない。
この際僕は悪者になってもかまわない。

こういう時の僕は徹底的に戦う。
マシンを作り上げることにおいて僕は絶対的な自信を持っているからだ。
実際、今まで共にレースを戦ってきた数々のチームが僕のセッティング能力を認めてくれている。
連日遅くまでサーキットに残ってデータを分析し、意見を戦わせる。
もちろん全てはチームのため、最後に皆が笑顔でレースを終えるためだと言う信念の元の行動でもある。

それにしても今回は骨が折れるな…。
エンジニアの彼の頑固さは半端ない。(笑)
モータースポーツを愛してやまない彼のスピリットを僕はリスペクトしている。
ただ、現在のモータースポーツにおいてアナログな感覚だけでマシンを作り上げることは出来ない。
必要なのはデータ収集能力でありデータ解析能力なのだ。
その場しのぎのアイデアでは速いマシンは作れない。
今はそういう時代なのだ。
でもまだ始まったばかり、僕は絶対に諦めない。

24時間を超えて2014

(3)へ続く

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