僕が所属するOAK RACINGの協力の下、今回僕がドライブするマシンに掲出することになった「ARIGATO」のロゴ。
いま何故「ありがとう」なのか・・・。
日本は現在も復興の途中で厳しい状況下にありますが、同時に皆さんご存知の通り復興の過程において、沢山の国々の本当に多くの方々にご支援を頂いています。
この「ありがとう」 「ARIGATO」の言葉にこめられた意味・・・。
震災から3ヶ月が経とうとしている日本は未だ厳しい状況下にありますが、こうして支援を続けてくださっている沢山の国とその地で暮らす人々に対し、日本国民は深い感謝の念を抱いているという事をきちんと伝えられればという思いからマシンに掲出させて頂いた次第です。
同時にまだまだこれから解決しな ければならない問題が山積みの中、世界に向けて今後も変わらず日本の置かれている状況を意識していて欲しいという切なる願いでもあります。
先日僕は医療ボランティアのお手伝いで、今回のボランティア活動を実現して下さった内藤先生らスタッフの皆さんとともに宮城県東松島市にある避難所を訪れる機会を頂きました。
震災後初めて訪れる市内の被災現場を宮城県議会議員の渥美巖氏にご案内頂きましたが、その信じられない光景を前に人間の無力さを痛感しました。
どんな言葉もこの時感じ た感覚を表現するる事は出来ないとも感じましたし、もはや私達はこのような感覚を言葉にする方法(手段)すら知らないのかもしれません。
そんな言葉にならない感覚を頂いたまま訪れた避難所でお会いした東北の方々。
彼ら彼女達からは驚くほど我慢強 く、そして前向きに明日に向かって歩き始めようとする強い本当に力強い意志が伝わってきたのも事実です。
それはまさに絶望の中にある一筋の光のようでした。
今回東北でお会 いした沢山の方々との会話の中で一番僕の心に刺さり、そして今も残っている言葉があります。
それが「ありがとう」です。
被災地にボランティアに来る方々や復興の為に尽力されている方々、そして未だ続く原発の現場で対応の為に戦っている方達、こうして東北地方の事を考えてくれている方々に「ありがとう」とい う感謝の気持ちを伝えたいという言葉を、今回お会いした沢山の皆さんから耳に致しました。
このような状況の中でどうして・・・?
始め僕の頭の中 は?だらけでした。
愚痴や弱音の一つでも言いたいだろうに・・・。
日本人とはこれほどまでに強く尊い心を持った国民だったのでしょうか。
私達は現在の東北地方と同じ状況にあって、同じように「ありがとう」と言う言葉を素直に伝える事が出来るだろうか。
我々日本人は今復興に向け全力で歩を進めていますが、現在に至るまで、そして今後も国内外を問わず数多くの国々と人々からの支援を必要としていると思います。
今回東松島へ足を運ばせて頂いた事で、「ありがとう」この言葉のもつ意味は深くと尊いものだと改めて感じました。
最初僕はこの言葉を避難所で聞いた時にとても苦しい気持ちになったのを覚えています。
自分がこれまで何も出来ていなかったことに対して・・・。
震災後現在に至るまで僕は一度も暖房をつけませんでした、毎日エレベーターを使わずマンションを歩いて上がっています。
しばらくはお風呂に入る事すらやめていました。
本当に限られたことですが、義援金や支援物資も自分の出来る範囲でやらせて頂いています。
それらはあまりにも小さな事ですが、自分の中からこの日本で今現実に起きている出来事が薄れていかないように、日々の生活の中に自然と被災地の事を考えられる状況を作ってきました。
諦めない、信じ続ける事。
これはずっと僕が意識して続けている生き方そのものでもあると思っています。
今回東松島市を訪れる機会を頂いて、今まで以上に今日本で起きている事をきちんと意識しなければとの思いに駆られたのも事実です。
被災した皆さんの言葉を伺うにつれ、いま日本は震災後数多くの国から受けた支援や応援の言葉に対し「ありがとう」の言葉を伝えなければならないと僕は感じています。
これは今後の日本の復興の為にも とても重要な事ではないでしょうか。
政治的な駆け引きが複雑に絡み合う中、きちんとこの言葉は日本を支援してくれている諸外国に伝わっているのでしょうか。
この「ありがとう」という言葉を、僕はルマン24という 世界的なモータースポーツの舞台において、一人でも多くの方に伝えることが出来たらと思っています。
このレースには毎年20万人を超える数の人たちが世界中から集まります。
テレビ等メディアの視聴者を入れたらその数は膨大になります。
「ありがとう」の言葉のもつ意味。
それは日本国内でだけではなく、世界共通であると信じたい。
今年この「ありがとう」という言葉を載せて僕はルマン24を走ります。
このような時期だからこそ、「ありがとう」を伝えられる日本人の強さを、我慢強く尊い礼節を重んじる国民性を、このルマン24を通してヨーロッパをはじめ多くの国の方々に伝えられればと思っております。
そしてそこから何かを少しでも感じてもらえれば・・・。
それが今年多くの方達のご支援を受けて世界に挑戦するチャンスを頂いた僕の使命だとも思っています。
今後日本に対して世界中から更なる理解と支援の和が広がる事を祈って。
中野信治