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スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

大分県・オートポリスにて開催されたスーパー耐久シリーズの第4ラウンド。

このレースの直前には集中豪雨により九州北部には甚大な被害がもたらされました。
今回この集中豪雨により大きな被害があった地域からそう遠くないオートポリスでのレース開催にあたっては、主催者側も直前までレースを開催するか否かの難しい決断を迫られていたと想像します。

レース前の主催者側からの説明では、今回の集中豪雨によりこの地域の近郊を訪れる方が極端に減少する現状の中、少しでも多くの方達に足を運んで頂きたいとの依頼もあり、今回のレース開催へと踏み切ることになったとのことでした。
こうした状況の中、サーキットに足を運んで下さっている皆さんに、我々ドライバーとチームが一丸となって素晴らしいレースを見て頂けるよう集中しなければならない。

改めてこの場をお借りしまして、今回の九州北部における集中豪雨により被害に遭われた皆様へ心からお見舞いを申し上げます。
少しでも早く心穏やかな日々が戻りますように・・・。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

私にとってはスーパー耐久参戦3レース目となる今回のオートポリス戦。
ここオートポリスを訪れるのは実に13年振りとなる。
スーパーGTに参戦していた2004年は、#98のドライバーでもある加藤寛規選手が当時のチームメートだった。13年の時を超えて再び同じチームで仕事が出来るのも感慨深い。
私はこの翌年からルマン24への参戦を開始することになり、再び海外のレースに特化することになるのだが、加藤選手は日本でその後もGTなどの箱車でのレースを続けていて、今ではもう箱車のスーパースペシャリストと言っても過言ではないだろう。
我々のチームにとっては強い味方だ。

今回はレースウィークの木曜日にテスト走行が行われることに。
テスト走行がこれまで一度もなかったこともあり、こうして僅かな時間でも走行が出来るのは有難い。久しぶりのサーキット、ようやく慣れてきたとはいえまだまだ箱車は初心者マークの私にとっては願ってもない時間だ。

このテスト走行では今回私のチームメートとなる土屋圭一選手が登場。
もう一人のチームメートである伊藤選手は、鈴鹿8耐へ向けての2輪のテストがあるため参加が出来ない。#97は土屋選手との2人での走行となる。
前回の鈴鹿ラウンドで久しぶりに公式戦へと復帰した土屋選手の走りは私にとっても興味深いものだ。今回は2輪の伊藤選手、そしてドリキン土屋選手とこれまた珍しい組み合わせ。3人の平均年齢はかなり高いのだが、同時に注目度も抜群だ。(笑)

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

セッションは前回の鈴鹿戦でこのマシンを既に経験済の土屋選手からのスタート。
マシンはアンダーステアが強い傾向にあるとのことで、その症状を改善するべくエンジニアがセットアップの変更を進めていく。
ドリキンの異名を持つ土屋選手のドライビングスタイルは非常に興味深い。
私のようなカート出身で若いころからフォーミュラに特化して長年レースを続けてきたドライバーとのドライビングスタイルの差はどんな感じなのだろうか…?

予定の走行を終えた土屋選手からバトンを受け取り、ちょっと久しぶりになるシビックTCRのドライブだ。
オートポリスのサーキットは2004年にGTのNSXで走らせて以来なので、実に13年ぶりとなる。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

ここは大きな高低差がありタイトなコーナーが連続し、その雰囲気は何となくヨーロッパのサーキットをイメージさせてくれる。
日本のサーキットとしては少しばかり異質な感じもするのだが、海外でのレース経験が長い私には好きなタイプのサーキットと言っていい。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

さてマシンの方なのだが、私が第3戦の鈴鹿戦を欠場している間にマシンの改良も少し進んでいるようで、前回マシンを走らせた第2戦の菅生の時とは少しフィーリングが違う印象。
ポジティブな部分とネガティブな部分を両方感じられるのだが、このマシンの特性上、全ての問題を一気に解決するのは非常に難しい。
マシンを一発だけ速く走らせるだけであればセットの方法もシンプルなのだが、もともとタイヤには厳しいこのレースではあくまで決勝を見据えてのマシン作りを心掛けなければならない。
それでもファーストインプレッションは悪くなく、細かい調整を加えただけでマシンのバランスはほぼイメージ通りに変化してくれている。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

一方の土屋選手はFFマシンの特性でもあるアンダーステアに苦しんでおり、サイドブレーキが付いていればもっと速く走れるんだけどなぁと、半分冗談とも本気ともとれる言葉を漏らしている。(笑)

私にとってはレーシングマシンにサイドブレーキ?!なのだが、流石は天下のドリキンだ!
走行後に土屋選手の走行データをロガで確認してみたのだが、これが面白い。
マシンの動かし方、走らせ方は私が今まで見たことのないタイプのものだった。
ドリフト上がりのドライバーは皆さんこんな感じでマシンを走らせているのだろうか??その発想は非常に興味深く思わず唸ってしまった…。

明けて金曜日には2回の公式走行が行われる。
この日も天候は晴れ。
ここから2輪のテストを終えてオートポリスへと駆け付けた伊藤選手がジョインする。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

その伊藤選手、そして初日から少しマシンとサーキットとの相性に手こずっている土屋選手をメインに1回目の走行を行うことに。
伊藤選手は癖のないナチュラルなドライビングスタイル。いつも通りの着実なスタイルで徐々にタイムを削りとっていく。
箱車での経験も豊富な伊藤選手は、相変わらず器用にこのシビックを乗りこなしている。
2輪のテスト直後だと言うのに疲れも見せていない。実にタフな男だ。
土屋選手はマシンの動きを自らのイメージに近づけるべくマシンセットとドライビングの両面からトライ&エラーを繰り返している。マシンを速く走らせるための貪欲な姿勢が素晴らしい。

私はこのセッションで最後に少しだけマシンを走らせることに。
マシンバランスに大きな問題はなさそうだ。
細かい調整は必要だと感じるのだが、まずはチームメートの2人が周回を重ね、いいイメージで走ってくれることが先決だろう。

ライバルであるアウディ勢のスピードは今回も侮れない。
ラップタイムに関してはほぼ互角か、若干向こうが上回っている感もある。
予選に関しては新品タイヤでのパフォーマンスが高いアウディ勢が優勢だろうか。

2回目の走行では伊藤選手から走行をスタート、次に土屋選手、そして最後に私へとバトンを繋いでいく。
それぞれのドライバーが少しずつマシンのセットに変更を施しながら、順調に走行を重ねていく。
この2回目の走行での私の役割はレースセットをシミュレーションすること。
燃料の搭載量とタイヤのラップ数を合わせた状態でレース後半の状況を作り出し、少し長めの連続走行を行う。
バランスはまずまずと言ったところだろうか。若干タイヤには厳しい部分もあるのだが、決勝に向けてこの辺りをどう対処出来るかがキーとなってくるだろう。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

土曜にはごく短いテスト走行と共に予選が行われる。
この日も天候は晴れだ。レースウィークに入ってからのオートポリスの天候は安定している。
土曜日の公式走行は時間が短く限られているため、少しでもマイレッジを稼ぐべく、木曜に走行を行えなかった伊藤選手が担当することに。
ここでは午後から行われる予選に向けてのシミュレーションがメインとなる。
予選は通常通りAドライバーとBドライバーが担当する。
伊藤選手はここまで順調な仕上がりを見せている。アウディ勢のスピードには少しばかり及ばないのだが、重要なのは予選よりも決勝ペースなのでそれほど気にすることはない。重要なのは、レースの前半から後半までを通して安定したスピードで走る続けられるマシンを作り上げることだ。

迎えた予選では両ドライバー共にアンダーステア傾向のマシンに少し苦しんでいるようでチームのもう1台である#98、そしてアウディ勢の後塵を拝することに。
ただこのレースにおいて予選はそれほど重要ではないのだ…。
私は今回もCドライバーなのでレースのレギュレーション上、予選でのタイムは結果には反映されることはない。
ただ週末に入って初めての新品タイヤでの走行が可能なこの予選での数周は、決勝に向けてマシンの最終確認をする上でも非常に重要だ。

そしてこの予選では、私にとって今年2回目となるクラストップタイムでコースレコードを樹立することになる。
私にとっては前回の菅生に続いてまさかの2連続でのコースレコード樹立だ!
予選には反映されないとはいえ、決勝ペースだけでなく、一発のスピードの面でもホンダシビックTCRが、予選で優勢なアウディ勢と同等に戦えることを証明出来たことは、私たちにとって大きな手応えとなった。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

予選を終えると、いつも通りチームのドライバーとエンジニアが集合しての合同ミーティングが行われる。
このミーティングで#97#98両方のマシンそれぞれの方向性を確認し、明日の決勝へとマシンのセットアップを進めていく。
セットアップの基本的な方向性は2台共に同じなのだが、細かい部分での味付けはそれぞれのエンジニアとドライバーの好みによって別れていく。
今回の決勝セットのイメージは、アグレッシブな#98に対して少しだけコンサバな#97といったところだろうか。
私の決勝でのマシンセットは木曜の走行の段階でほぼイメージが出来ている。
3日間の走行を終えてみて、ほぼそのイメージ通りに落ち着いてきたと言っていいだろう。
あとは決勝でどんなレース展開が待ち受けているか、それだけだ。

そして迎えた決勝、この日も雨が降る気配はない。
今回は気温も高くいつにも増してタイヤに厳しいレースが予想されるので、ドライバー自身によるタイヤマネージメントが非常に重要になってくるだろう。
マシンのセットに関しては、エンジニアとのミーティングを重ねた結果、タイヤに優しいマイルドな方向で仕上げてきている。

レースがスタートしてしまえばもうアンダーもオーバーもない。
最後はドライバーがどこまで頑張れるかにかかっているのだ。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

毎回安定感のある走りでレースのスタートドライバーを担当してくれている伊藤選手が、今回も決勝のスタートを担当することに。

前半は無理をせず後半追い上げるスタイルの伊藤選手の走りは実にスムーズだ。
今回も無難にスタートを決め、同クラスのアウディ勢、そして同じチームの#98との間隔を見極めながらレースを進めている。前半のペースは全車ほぼ互角に見える。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

スティントの中盤から後半にかけてのタイヤ状況が厳しくなってからが勝負だ。
前半はアウディの1台に鼻先を抑えられてしまっていることもあり、ペースをコントロールし上手くタイヤマネージメントに徹することが出来ているようだ。

スティントも中盤に差し掛かったところでこのスローペースに痺れを切らしたのか、伊藤選手がペースを上げて前を行くライバルに迫ってきた。
そして中盤を過ぎたところで、タイヤの摩耗が厳しくなりペースの上がらないアウディのオーバーテイクに成功する。
そこから更にペースを上げ、前を走る#98のマシンの背後に迫るところまで来ている。
その前にはトップを走る45号車のアウディの姿も見えているはずだ。
ここで伊藤選手のモチベーションが上がらないはずがない。
前を行く2台との間隔を詰めるべく更にペースアップ!
スティント後半には前を行く2台の直ぐ後方まで迫るのだが、ピットまで残り数周のところでタイヤが厳しくなったのか一気にペースダウンしてしまう。
中盤のペースアップで少しタイヤを使い過ぎたか…。

ここで同じくタイヤの摩耗に苦しんでいたアウディが先にピットに入りドライバー交代とタイヤチェンジを行う。
トップに上がった#98のマシンをドライブしている石川選手は、ここからラストスパートに入る。
前半から中盤で辛抱強くタイヤマネージメントをしていたのだろう。周りのマシン達がタイヤの限界を迎えてからの石川選手のペースは素晴らしいものだった。
石川選手は昨年までF3を戦っていた若手のドライバーだが、今年からはスーパーGTや86のレースにも参戦しており、箱車のドライビングを少しずつものにしつつあるように見える。

一方の伊藤選手は限界を迎えたタイヤのまま当初の予定通りの周回数を走り切りピットイン。グリップを失ってしまったタイヤで走り続けた数周に失ったタイムは大きく、ここでトップを行く#98と45号車アウディとの差が大きく開いてしまう。
もう少し早くピットに入れるべきだったか…。

タイヤマネージメントの難しさは言うまでもなく、長く4輪のレースをやっているドライバーであっても簡単に克服出来るものではない。
箱車の経験が豊富だとはいえ、普段は2輪のレースに参戦している伊藤選手がここまで器用に4輪のマシンをドライブしているのはやはりお見事だ。

ここで注目度抜群のドリキン土屋選手にドライバー交代。
どんなレースを見せてくれるかが楽しみだ。
前回の鈴鹿でも久しぶりの公式戦とは思えぬアグレッシブな走りを披露されていたとのこと。この週末に入ってからは、自身のイメージとマシンの動きにズレがあるようで少々苦しんでいるようにも見えた土屋選手。決勝直前までドライビングに関して我々から吸収出来ることがないかと考え、真剣に取り組んでいる姿は現役を離れた今でもプロフェッショナルだ。

スティントの前半はタイヤのマネージメントを考えてか少しスローペースで周回を重ねている。この土屋選手の走りを我々ドライバー達はピットのモニター、そしてチームとの無線を聞きながら見守っている。
そして、土屋選手の真骨頂はここからだった。
走行を開始して早速チームとの無線での交信が始まるのだが、その内容が秀逸に面白いのだ!
ここからは土屋劇場の始まりだ。(笑)
レース中にも関わらず、こと細かに無線で状況説明が入ってくる。

「チームメートの寛規と信治に言われた通り走ってるよ~。」
「もう少し回転まわしちゃおっかな~。」
「今のタイムは遅い車にひっかかったから仕方ないよね~。」

などなど!
これが実に面白い。
ピットでこの無線を聞いている我々ドライバー達は、走りながらよくこんなに喋れるなぁと感心しきりである。私なんかはもともと口数は少ない方なので余計にびっくりだ(笑)
そんな土屋選手だが、スティントの後半ではきっちりとタイムアップを果たし、タイヤマネージメントも上手くこなしていたのはお見事だった。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

ここからはいよいよ私の出番だ。

トップを走る#98との差は10秒弱と言ったところだろうか。
#98の最後のドライバーは箱車のスペシャリストでもある加藤選手だ。
加藤選手と私のラップタイム差はテスト段階から非常に接近しているので、このスティントでの走りがレースの勝敗を決することになるだろう。

土屋選手が予定通りの走行を終えてピットへと戻ってきた。
すぐさまドライバーチェンジを開始するのだが、ここでちょっとしたトラブルが発生する。
ドライバー交代は走り終えた選手が次のドライバーの補助を担当するのだが、ここで土屋選手の手元が狂ってしまったようでシートベルトがうまく入らない。
ここで弱冠のタイムロス。
悪いことにその後のエンジン始動にも時間がかかってしまう。
エンジンを始動するためのスターターがなかなか反応せず、ここでも手痛いタイムロス。

しかしまだレースが終わった訳ではない!
タイヤマネージメントはF1時代から私の得意分野だ。
ここ10年はルマン24時間耐久レースなどで、耐久レースの走らせ方をそれなりに学んできた。
箱車にも慣れてきたのでどんな状況であっても楽しむことが出来るだろう!

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

ピットアウト直後にはクラス違いのマシンの行く手を阻まれペースを上げられずにいたのだが、タイヤをマネージメントするためにもここで無理はしたくない。

走行を開始して2、3ラップ目だっただろうか。
その前から少し違和感を感じてはいたのだがどうも車の挙動がおかしい。
何となく挙動に違和感を感じていたため、ブレーキングなどではかなり抑え気味に走行を続けていた。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

その時だ。

突然ステアリングが効かなくなりマシンが左右に流されてしまう…。
違和感を感じていたこともあり、かなり注意深くマシンを走らせていたため、なんとかギリギリのところでクラッシュを避けることは出来た。
そのまま舵の効かないマシンを慎重に走らせ緊急ピットイン。
冷や汗をかきつつも何とかマシンをピットまで戻すことが出来たのは幸いだった。
肝を冷やすとは正にこのことだ。(汗)

ここでチームのメカニック達がマシンの状況を確認。外からは原因が分からないことからタイヤカスを拾ったことが原因なのではないか?との無線が入る。
しかしそんな状況ではない!
私が無線でもう一度状況を説明する。
タイヤカスはスロー走行でピットに戻る際にタイヤに付着したものだろう。
外からは原因を確認することが出来ないようだ。

ここでタイヤを外して足回りの確認を行ったところ、サスペンションアームの部品に問題が生じていることが分かった・・・。
メカたちが一斉に修復のための作業に入る。
ここは流石に百戦錬磨の童夢のメカ達の仕事だ。
素早い作業でマシンを修復、数分後には再びマシンをコース上へと送り出してくれた。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

このトラブルで順位を争う権利はなくしてしまったのだが、今後のレースのためにもマシンの状況とタイヤの摩耗を確認するべく走行を続けることに。

マシンのバランスに関しては初日にマシンを走らせたときにイメージした通りの状況で、マイルドに仕上げたセットアップのお蔭でタイヤの摩耗も悪くない。

トラブルにより周回するラップは違ってしまったのだが、ピットアウト後はちょうどトップを走るチームメートのマシンをバックミラーで確認しながらの走行となり、ほぼ同等のペースで周回を重ねることが出来ていた。
チェッカーを迎えるタイミングでもタイヤの方には全く問題がなく、ここから更に更にハイペースで周回を重ねられる状況だった。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

結果は4位完走。
我々モデューロホンダプロジェクトとしては、チームの1-2フィニッシュが欲しいところだったのだが・・・。
トラブルばかりはどうすることも出来ない。
今回のトラブルのはっきりとした原因は分からないのだが、恐らくはサーキットの特性上起こってしまったアンラッキーなものだったのだと考えられる。
他のカテゴリーでも似たようなトラブルがこのサーキットでは起きているようだった。

レースにおいてのマシントラブルはどのチームのどんなマシンにも起こり得ることなので仕方ない。
これがモータースポーツなのだ。
物を使うスポーツの難しさであり、また面白さでもあるだろう。
色々な意味で人間力を試されるスポーツだと思う。

2017年スーパー耐久シリーズも残すところ2レースとなった。
ライバルのアウディ勢に加えて、次戦にはフォルクスワーゲンも再び参戦予定とのこと。
何れもスピードに関しては我々と同等かそれ以上の潜在能力を持っているマシン達だ。
ここまで順調に勝利を積み上げてきたモデューロレーシングプロジェクトにとっても、更に厳しい戦いが待ち受けているだろう。
百戦練磨である童夢のチーム力と、経験豊かなドライバー達が力を合わせ一つになることで、そんな厳しい戦いも楽しむことを忘れずクリアしていきたいと考えている。

特に我々#97のマシンは毎戦色々な分野の面白いドライバー達がドライブすることで、ホンダシビックをドライブすることの楽しさを多くの方々に知って頂くという使命がある。
恐らくは私自身がこのマシンのドライブを一番楽しんでいるのではないか?

そう思えるほどにドライビングを楽しむことが出来ていることに自分自身が一番驚いているのだ!
これまで殆ど経験のなかった苦手意識の強い箱車でのドライブに、不安しかなかった開幕前。だがそんな不安もこのマシンを初めてドライブした瞬間からどこかに消え去っていた。

このシビックTCRのマシンがそれだけ完成度の高いマシンだったと言えるだろう。

マシンをドライブする我々ドライバー達が楽しくなければ、当然この楽しさを周りのユーザーの方達に伝えることなど出来ない。

スーパー耐久シリーズ第4戦オートポリスを終えて

残りのレースも引き続きチームの皆と共に最高の集中力で戦い、思い切り楽しむことが出来れば思っている。

この戦いを通して、我々モデューロホンダレーシングプロジェクトの想いが、車を愛する沢山の方々に伝わってくれればこれほど嬉しいことはない…。

中野信治

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